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ふじこ
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@245pro
のろのろ読書
  • 2025年9月17日
    介護未満の父に起きたこと
    元気と介護のあいだに介護未満がある。人はいきなり介護を必要とするのではなく、だんだんとできないことが増えていく。お金と決断力でグイグイ解決していくスーさんのエピソードは読んでいて爽快。大掃除をフジロックに見立て、イベンターとして全てをやり切る頼もしさが素晴らしい。80歳を過ぎてガールフレンドが絶えないミック・ジャガーことお父様、さぞかし若い頃からチャーミングだったのだろうなと想像する。家族からの細かい要求にどのような距離感とテンションで答え続けるべきか、とても参考になる一冊だった。
  • 2025年9月12日
    空気が読めない大学教員と自己嫌悪のYouTuberはみずからのコミュニケーション困難にどう向きあってきたか チームワークが苦手な人へ
    ASDの当事者研究をしている横道氏とASD傾向があるだい氏の共著。対話を進めるにはどうしたらいいのか。〈友達はいないけど仲間はいる〉という一文が、ここに私の求めているものがあると教えてくれる。対話と聞くと難しいイメージがあったけど、これなら私でも参加できるかもしれないという思いに少しずつ変わっていった。まだ把握しきれていない自分自身の内面に出会いたい。読み終えて、もっといろんな人と対話をしたくてうずうずしている。
  • 2025年9月12日
    なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか
    刊行されて10年以上経つベストセラー恋愛本。人にはそれぞれ心の穴があり、まずは自分の心の穴のかたちを知ること。ありのままの自分を受け入れて自己受容すること。自分自身を大事にすることで愛してくれない人に執着することがなくなっていく、という内容だった。恋は永遠には続かない。愛に変わるか、終わるかのどちらか。あの頃の私はこれを理解していないままに恋をしていた。自分を愛せていないのに誰かに愛されようとしていた。逃げ続けていたあの頃の私をようやく捕まえることができた気がした。
  • 2025年9月4日
    おごさま
    ボーイズバーにハマってしまった田舎出身のメンヘラ女子さあや。担当に風俗で稼いだお金を全て注ぎ込み、売掛を嵩増しされ、追い詰められたさあやは家に旧くから伝わる「おごさま」に助けを求める。クズがクズを成敗する因習村ホラー。映画『キャリー』を彷彿とさせる化け物系スプラッタ描写にゾクゾクさせられる。地雷系女子って普段こんなことを考えてるんだな、と文化人類学的な側面でも楽しめました。願いを叶えたいならやっぱり何かしらの代償が必要なんだね。
  • 2025年9月1日
    水中の哲学者たち
    哲学はもっと難しいものだと思っていた。永井さんの文章を読むと、哲学は日常と地続きになっていて私たちはいつでも対話を始められるということがわかってくる。あれ、これってなんでこうなっているんだっけ。そう思い始めたらもう哲学だ。なんで生きているんだっけ。なんで死が怖いんだっけ。水の中で哲学に潜る。どうして私たちは思考というものをするんだっけ。考えることは自分と対話することで、人と対話することは新たな問いに触れることだ。世界って、私が思っていたよりずっと楽しいところみたい。
  • 2025年8月21日
    さみしくてごめん
    哲学者である永井玲衣さんのエッセイ集。すごくすごくすごくよかった。彼女が日々感じていることがスッと身体に染み込むように入ってくる。クスッと笑えたり、哲学対話を通して子どもの発言にはっとさせられたり。あるとき急に哲学に引き込まれてしまうことを、永井さんの言葉で「哲学モメント」というらしい。私にもたまに哲学モメントが起きる。急に宇宙に放り出されてひとりぼっちのような気がしていたけど、本書を通してたくさんの星が瞬いていることを知った。この本に共鳴してくれる人がいる限り、私はひとりじゃない。
  • 2025年8月19日
    西の魔女が死んだ
    タイトルの文章から始まる物語は2年前の1ヶ月間を回想する形で語られていく。不登校になってしまった中学生のまいは、両親の元を離れておばあちゃんの家で過ごすことに。自らを魔女と呼ぶおばあちゃんに教わりながら、まいは魔女の修行を始める。学校に行きたくない毎日を送っていたあの頃の私に、今すぐ届けてあげたい。なんでもない日々は、時間が経つにつれてかけがえのない思い出へと変わっていく。おばあちゃんの愛に涙がぼろぼろと溢れてくる。私も精神を鍛えていつか魔女になりたい。自分で決めて、やり遂げる魔女に。
  • 2025年8月4日
    へびつかい座の見えない夜
    収集癖のある人たちを描いた短編集。自分のためだけに何かを集めたい。誰にも見せることのない思いはキラキラと静かに輝く。他人から見て価値のないものであるそれは、ぞんざいに扱われたときに心ごとぐしゃりと潰される。表題作と『ハマエンドウが咲いていた』がお気に入り。田舎特有の息苦しさと、誰にも迎合しない同僚への羨望が繊細な筆致で描かれる。役割に自分を当てはめるのではなく、自分がなりたい姿に変わっていく。表題作のラストシーンの美しさに息を呑む。誰かが望む私ではなく、私が望む私でありたい。
  • 2025年8月1日
    52ヘルツのクジラたち
    家族に虐待され、かつて祖母が住んでいた町に移住してきた貴瑚。海辺の町で出会った少年は「ムシ」と呼ばれていた。人の優しさ、不器用さ、たくさんのものがぐちゃぐちゃになって私の中に雪崩れ込んでくる。苦しみを訴えることができない人はたくさんいる。孤独を知っている人は、時に誰よりも強くなれる。貴瑚の最後の選択は、きっと彼を救ったのだ。誰かに救われた人は、別の誰かを救うことができる。クジラが魂の番と泳いでいく。52ヘルツの声が聞けるクジラに、私もなりたい。
  • 2025年7月31日
    わたしは、あなたとわたしの区別がつかない
    読みながら何度も胸が詰まって、苦しくなって、それでも最後まで読み切った。ASD当事者の著者が生きる世界はあまりにも過酷だ。叫び出したいのも、何かに怒りをぶつけたいのも、じっと耐えて生きていく。高校一年生の男の子がこれだけ明確に思いを言語化して伝えてくれることに驚く。私たち定型発達者はこれほどまでに自分を見つめたことがあっただろうか。最後のお母さんからの文章を読んでボロボロと泣いてしまった。愛に包まれていればどんな人も生きていける。発達障害者も、そうでない人も。
  • 2025年7月17日
    模倣犯 (五)
    模倣犯 (五)
    東京の下町でOLが行方不明になり、その10ヶ月後に公園から切断された女性の片腕が見つかる。連続誘拐殺人事件は、やがてメディアを巻き込む劇場型犯罪へと発展していく。多くの登場人物たちによる心理戦に夢中でページを捲った。クライマックスで模倣犯というタイトルの伏線回収がされ、さまざまな感情が自分の中に流れ込んでくる。真相がわかっても、誰も、犯人さえも救われない。誰かがいなくなれば、それを悲しむ人がいる。殺されていい誰かなんて、ひとりとして存在しない。人は、誰もが生きているんだという当たり前のことを思い出す。
  • 2025年7月9日
    ルック・バック・イン・アンガー
    実在するアダルト本出版社をモデルに書かれた群像劇。傷ついて、傷つけられて。血を流さないと雑誌を作ることができなかった、あの頃の不器用な男たち。どこまでがリアルで、どこからがフィクションなのか。『凡夫』と合わせて読むと異常さと恐ろしさがより現実味をもって迫ってくる。樋口節に翻弄され、酩酊状態のまま一気に読み切った。男も女も、必死に今を生きていた。本作に書かれていることが生きているということならば、私はまだ今を生きることができていないのかもしれない。
  • 2025年7月3日
    爆弾犯の娘
    爆弾犯の娘
    映画『桐島です』の脚本家が自身の半生を綴ったエッセイ。彼女の父も爆弾犯として指名手配され、逃亡生活を送っていた。父を匿うため、少女の日々はたくさんの嘘に塗り固められていく。登下校の際は交番の前を避けて通り、ボストンバッグには大事なものを入れていつでも逃げられるようにしておく。重い話をさらっと書いているところに彼女の防衛本能が透けて見えて、胸が苦しくなる。最後、梶原さんの言葉を読んで自然と涙が流れた。幼い頃の私はこうやって抱きしめてもらいたかったのだ。今度『旅立ちの時』を見よう。
  • 2025年7月2日
    銭湯
    銭湯
    酔っぱらいの夢の話をずっと聞かされているような、真面目に聞かなくてもいいのになんだかんだで最後まで付き合ってしまった。全ての受け答えが適当で、でも人の話なんてそんなにちゃんと聞かなくても世界はどこまでも続いている。バツイチ男の哀愁と中途半端な諦念はぐだぐだと身体に纏わりついてくるようで始末が悪い。でも、長い人生の中で時には同じところをぐるぐるすることがあってもいい。ぐるぐるしていたらいつの間にか知らない場所にたどり着いている、そんな旅がしたくて私は本を読んでいるのかもしれない。すべてを捨てて僕は生きてる。
  • 2025年6月26日
    なぜ働いていると本が読めなくなるのか
    人はいつから読書をし始めたのか。人はいつから労働と読書を両立できなくなったのか。働いているせいで本が読めないのはおかしい。もっとたくさん本が読みたい。ありし日の三宅さんと全く同じことを感じた。私たちはそろそろ資本主義からの脱却を本気で目指さないといけないのではないか。今の働き方は健康で文化的な最低限度の生活ができていない。この事実から目を逸らさずに自分ができることから始めていきたい。働くためだけに生きるなんてまっぴらだ。
  • 2025年6月14日
    凡夫 寺島知裕。 「BUBKA」を作った男
    煙草と体臭が入り混じった饐えたような匂いが行間から立ち上る。雑誌全盛期、狂っている人間にしか作れないものがあった。誰かを傷つけ、傷つけられながらしか生きることができなかった。軋む音を聞かないようにして走り続けて、いろんなものを失っていった。私の平成という時代の認識がいかにひとつの側面に過ぎなかったかを見せつけられる。不器用な男たちの生き様に時代の残滓を見て、少しだけ羨ましくなる。〈本当に嫌いな人については書きません〉樋口さんから寺島さんへの精いっぱいの愛の言葉だと思った。
  • 2025年6月3日
    あたらしい散歩 専門家の目で東京を歩く
    専門家と一緒に東京の街を歩く。今までこんなにたくさんのものをスルーしていたことにただただ驚かされる。接着剤、植物、化石、タクシーなど新しい視点が加わると散歩はこんなにも楽しい。ムクドリが駅前の木に群れて騒ぎがちな理由は思わず「へ〜!」と唸ってしまった。
  • 2025年5月15日
    ルポ 中年童貞
    女性と一度も性交渉を持ったことがない男性たち。様々な事例を読んでいく中でわかったのは、彼らはみんな思考の中に生きているということだ。自分を受け入れてくれる若くて可愛らしい処女を求めている。自身が女性に相手にされないことは省みず、受け入れてくれない女性が悪いと主張する。リーマンショック以降中年童貞が増えたこと、中年童貞は未だに母親の羊水に浸かっているという話がとても興味深かった。今後ますます中年童貞は増えていくのだろう。鈴鹿イチローが来世ではきっとセックスできますように。
  • 2025年4月20日
    ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス
    めちゃくちゃ面白かった!!理事長が定めた大量の謎ルール、25年以上にも及ぶ独裁体制。一時たりとも落ち着くことのできない監獄から平穏を取り戻すべく、立ち上がった勇者たちがいた。とにかくレジスタンスメンバーたちの情熱と執念が凄まじい。ここで倒れたら負けるという気合と根性、それに押されて少しずつ増えていく友軍。ちょっとでも何かが欠けていたら、何かが噛み合わなければ、この戦いに勝利することはできなかった。思考に囚われたモンスターも元は人間で、目的は同じ場所だったのだと気付かされる。
  • 2025年4月12日
    アサイラム
    アサイラム
    〈わたしの人生なのだから、最優先するべきは、わたしなのだ。〉スミレは大学生のときに性暴力に遭い、とあるきっかけからその出来事がフラッシュバックして日常生活がままならない状態まで追い込まれてしまう。仕事を辞めて『被害者のための街』に移り住んだスミレ。そこで自分自身とゆっくり、少しずつ向き合っていく。読みながらずっとズキズキと胸が痛んでいた。深い傷を負ったという事実をできるだけ見ないようにして封じ込めてきたスミレの中に私がいる。読み終えて光が見えた。今もどこかで苦しんでいる誰かにこの物語が届くように願う。
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